Mn添加GaN(GaMnN)は、半導体でありながら室温で強磁性を示すという新機能材料であり、Mnの価数制御によりその機能をコントロールできる材料であることが明らかになりつつある。本研究は、このGaMnNの磁性特性制御法の確立を目指し、水素添加GaMnNの格子間水素と磁性の相関を詳細に調べるとともに、GaNにおいてアクセプターとして働くMgをMnとともに添加した、GaMnN : Mgを作製し、Mn3価/4価の価数混成状態を安定に発現させ、強磁性を発現させることを目指した。 当該年度、格子間水素導入前後のGaMnNのバンド構造について、XPS分析を行ったところ、格子間水素導入によりフェルミレベルが上昇し、Mn d電子数が増大することを明らかにした。また、導入した格子間水素を脱離させたところ、強磁性-常磁性転移が起こることを見出した。以上より、GaMnNの磁性がフェルミレベル制御により可逆的に変化することを初めて実験的に示すことに成功した。 また、Mg添加GaMnNについてはMn濃度5%のとき、Mg濃度が2%と極めて高いにもかかわらず、ウルツ鉱構造を保った単結晶が合成できることを明らかにした。これまでのところMn価数は3価であり、強磁性は発現していない。これらの高Mg濃度GaMnN試料について、残留水素が確認されていることからMgが不活性化されている可能性が示唆された。
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