Mn添加GaNは、半導体でありながら室温で強磁性を示すという新機能材料で、Mnの価数制御によりその磁気特性をコントロールできる材料であることが本申請者により初めて実験的に確認されたものである。本申請研究は、磁性特性制御法の確立を目指し、Mnの価数混成状態を安定に発現させる共添加元素を見いだし、強磁性を発現させることを目的とした。本研究期間、あらたな展開として、スパッタ法による遷移金属添加GaNの合成を試みており、平成23年度には、CrおよびV添加GaN、AlN薄膜をスパッタ法により合成し、結晶構造、バンド構造、遷移金属状態分析および電気伝導特性評価を行った。これらの膜は、表面、界面平坦性の極めて高い緻密な膜で、X線回折法によりウルツ鉱型多結晶であること、蛍光X線分析により、Cr、Vなどがよく分散し窒素に配位されて存在していることを確認することが出来た。これはGa、Alなどカチオンと置換して取り込まれていることを示すものである。また、光吸収スペクトル分析などから、価電子帯、伝導帯から分離された不純物バンドが形成されている可能性が示された。さらに、真空準位をゼロとしたバンドアライメント図を作成した。電気伝導特性において金属電極の仕事関数依存性を調べたところ、光学的特性から示された不純物バンド中のフェルミレベルとエネルギー的に一致するNi電極において、低抵抗接触となり、不純物バンドが電気伝導性をもつことが示された。スパッタ膜でも、理論的に予測されているように、GaN、AlN中の遷移金属が不純物バンド構造を形成し、かつこの不純物バンドが電気伝導を示すことは、本研究で初めて実験的に確認したものである。この成果は、希薄磁性半導体の応用上最も重要な電気伝導特性での確認であり、極めて重要である。
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