研究課題
本研究の目的は以下の2つに分けられる。(1)「原子間力顕微鏡(AFM)を用いた固液界面における液体構造観測法の確立」(2)[生体高分子における構造/機能と溶媒和の関係を解明である。(1)方法論に関してこれまで、AFMにより計測される力と溶媒分子の密度に関して、その対応関係を具体的に明示していなく、観測原理が不明瞭であった。そこで以下のような力と密度の対応関係を考案した。「液体中において、有限体積を持つ体が、液体分子を排除するために必要なエネルギーはゼロ次近似的には、その物体が占有する領域に含まれる液体分子数に比例する。つまり、物体に加わる力は、剛体壁の近傍など液体分子が空間的に不均一な密度を示す領域においては、近似的に密度勾配に比例することになる。」この観測原理は、現実の探針にも適用可能であり、力分布を積分した結果が密度分布に対応する。その係数の定式化が今後の課題である。(2)応用実験に関して生体高分子への応用の前段階として、雲母以外の無機結晶TiO2について基礎実験を進めた。雲母では、多層の液体分子層が観測されているのに対し、TiO2では検出可能な相互作用力レンジにおいて、僅か1層しか存在しないことを確認した。固体表面の電荷密度分布が、溶媒和構造に強く影響している結果である。生体高分子への応用は、バクテリオロドプシンなど2次元結晶を形成する系に限り成功をおさめているが、孤立系では未だ成功していない。測定試料の適切な調整法と純度向上が大きな課題である。現在、生物学者、生化学者との共同研究により、合成された生体モデル系を利用し予備的な実験を進めている。また、力検出感度を低下させることなくダイナミックレンジを拡大する手法を現在開発中である。
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Jpn. J. Appl. Phys. (In press)