平成20年度は、以下の2項目について検討した。 1. 血液ポンプおよび人工血管内部のプラズマ状態とa-C : H膜形成の関係 セグメント化ポリウレタン製血液ポンプ内部と、延伸性ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製およびポリエステル製人工血管内壁面に対し、高周波プラズマを利用したa-C : H膜を形成した。そして、用途に合わせたa-C : H膜を形成するために、a-C : H膜の表面改質方法についても検討し、窒素プラズマによるa-C : H膜の表面改質を行なった。また、a-C : H膜を形成中のプラズマ状態について観察するために、プラズマ診断を行なった。なお、プラズマによるプローブ先端の汚染を防ぐために、今回はヘリウム(He)プラズマ中にて、プラズマ状態の観測を行なった。プラズマ状態とa-C : H膜形成の関係については、引き続き検討中である。 2. 血液ポンプおよび人工血管内壁面へ形成したa-C : H膜の細胞親和性評価 血液ポンプおよび人工血管の内壁面へ形成したa-C : H膜について、繊維芽細胞および血管内皮細胞による細胞親和性試験を行ない、細胞親和性と成膜条件との相関性を、a-C : H膜物性値およびプラズマ状態の観点から検討した。また、細胞が移動しやすい繊維性ScaffoldをElectrospinning法により作製し、その繊維表面へ形成したa-C : H膜についても、同様な細胞培養実験を行なった。a-C : H膜の形成(成膜)条件にもよるが、血液ポンプや人工血管および繊維性Scafroldへ形成したa-C : H膜は、繊維芽細胞および血管内皮細胞の増殖に対し、良好な結果が得られた。
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