本研究は、Si(110)表面に実現する広大な一次元的表面構造(16x2再構成構造の単一ドメイン)の応用を目指すものである。Si(110)表面は16x2構造という長周期の表面再構成が存在するが、その構造を制御することで、有用な一次元構造(単一ドメイン)が得られることがわかった。この表面構造は、特に、原子や分子の低次元ナノ構造作製のテンプレートとして有用であると考えられる。本研究では、Si(110)-16x2単一ドメイン表面上へ種々の分子や原子を吸着させ、それらの自己組織化を利用した有用な一次元ナノ構造創製の指針を提案するものである。 H20年度では本表面のさらなる均質化、表面カイラリティ制御、及び表面の不活性化を達成した。H21年度では、本表面をテンプレートとし、様々な有機分子薄膜の作製を試みた。その結果、Si(110)上では多くの有機分子は自己組織化的な周期的構造とらず、非周期的な薄膜を形成することが明らかになった。非周期的分子膜においては、基板の構造を反映した長周期の構造変調の存在が明らかになった。この結果は、有機分子膜への一軸歪みの導入の可能性を示唆するものである。有機分子膜への歪み導入による電子状態変調変調は、有機エレクトロニクスにおいて重要なテーマの一つとなりうる。
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