本研究の目的は、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス光の発生と増幅に関する基礎技術を確立することである。平成21年度は超短パルス発生のためのモード同期発振の実証、及び高平均出力レーザー動作の実証を実施した。 1. モード同期発振の実証:波長2.8μm帯における超短パルス光発生技術を確立するため、ZBLAN系フッ化物ガラスファイバーを用いたモード同期発振に関する先駆的実験を実施した。昨年度に開発した低分散フッ化物ガラスファイバーを用いたリング型発振器に偏波制御を施し、世界で初めて非線形偏波回転によるモード同期パルス列の観測に成功した。現状では安定性の問題が残り、実用化へ向けた更なる開発が必要である。 2. 高平均出力レーザー動作の実証:モード同期発振器からの低出力の超短パルスを、ファイバーレーザー増幅器により高平均出力・高ピーク出力パルスへと増幅するための基礎技術を確立するため、ZBLAN系フッ化物ガラスファイバーの高出力連続レーザー発振における熱的特性を実験的に調べ、熱的限界を向上させる技術の開発を行った。その結果、世界最高出力の連続波2.8μm帯ファイバーレーザーの開発に成功し、これまで飛躍的な高出力化が困難と考えられてきたフッ化物ガラスファイバーレーザーが高平均出力レーザーとして高い能力を持つことを実証した。 以上の成果により、Erドープフッ化物ガラスファイバーレーザーによる2.8μm帯超短パルス発生・増幅へ向けた技術的見通しが得られた。
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