研究概要 |
本研究では, 時間幅が数サイクルの超短パルス光(サイクルパルス)を用いて, 回折限界を超える光プロセスの制御に必要な超高速かつメゾスコピックな相互作用過程を明らかにすることを目的とする。そのため, 当該年度は以下の研究を行った。(1)高強度サイクルパルス(パルス幅10 fs, エネルギー2 mJ)を利用することよって, コヒーレントな表面励起状態(プラズモンポラリトンもしくはエキシトンポラリトン)のみ存在する時刻における線形・非線形光学応答を観測するため, レーザーシステムの高機能化のための要素技術を開発した。(2)フェムト秒レーザー照射によるダイヤモンド状炭素薄膜上へのナノ構造形成を初期過程から表面観察した。その結果, 照射初期に形成される表面凹凸の周囲に局所場(近接場)が発生し, ナノサイズのアブレーションを誘起すること, レーザーを重畳照射するとそれらが周期的なナノ構造を形成することを明らかにした。同様の形成過程が窒化チタン薄膜でも観測された。(3)励起される自由電子密度を実験結果から見積もることにより, 表面プラズモンポラリトンがナノ構造の周期性の起源となっていること, 界面に存在する2媒質の誘電率がこの周期を決定することを明らかにした。(4)以上の結果より, 半導体にナノ構造を生成する条件を見出し, シリコン及びリン化インジウム表面上にナノ構造を生成した。(5)さらに, 入射する光の波数ベクトルを変化することにより, 局所場の分布を変化させ, 鋸歯状の表面構造を生成・制御することに成功した。
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