研究概要 |
前年度は,誘電体(DLCやTiNのような硬質薄膜)の表面に生成される100nmサイズの周期構造の物理メカニズムを明らかにした。その中で,構造の周期はフェムト秒レーザー照射により超高速で励起される表面プラズモン・ポラリトンの波数に起因することを示した。本年度はその成果により,半導体表面にフェムト秒レーザーを照射し,その表面での相互作用過程について詳しく調べた。まず,波長800nmの誘電率が大きく異なる4種類の半導体(GaAs, InAs, Si, InP)を用意し,大気中及び水中でフェムト秒レーザーを照射した。その結果,水中で照射した場合には全ての半導体表面に周期100-200nmのナノ構造が生成された。また,レーザーの照射条件を変えて実験を行ったところ,レーザー光のエネルギー密度が低く,1000パルスを超える重畳パルス数のときのみナノ構造生成を観測した。ナノ構造のサイズは共鳴時の表面プラズモン・ポラリトンの波数の半値にほぼ一致することから,半導体でも同物理過程によりナノ構造が生成されることを示した。また,水中でフェムト秒レーザーを照射した場合にのみナノ構造生成が観測されたことから,大気中ではナノ構造生成するプロセスよりも支配的なプロセスが存在すること,及び水がその競合プロセスを抑制できることを示した。以上の結果より,誘電体・半導体表面にフェムト秒レーザーを照射することで励起される局所場及び表面プラズモン・ポラリトンによって,ナノメートルサイズの微細加工を行うことができることを明らかにした。
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