研究概要 |
本研究の目的は、フェムト秒レーザー誘起ナノショックによって金属状態のシリコン高圧相を誘起・凍結させ、シリコンへのフェムト秒レーザーパルス照射のみによって金属シリコンを創製することである。 本年度は、高強度フェムト秒レーザーを照射したシリコンの結晶構造を、斜入射X線回折法と透過電子顕微鏡を用いて調べた。ノンドープ単結晶シリコン(純度11N)の(100)面に対して垂直にフェムト秒レーザー(波長800nm、パルス幅130fs、パルスエネルギー7mJ、強度2×10^<15>W/cm^2)を1点あたり1パルス照射した。XRD分析はSPring-8のBL13XUにて行った。試料の回転テーブルを新たに作製し、試料を回転させながら計測を行うことによって、面内の積分情報を得た。その結果、これまでの試料を回転させずに分析した結果と同様に、従来圧縮法では圧力解放後に残存しないシリコン高圧相であるβ-Sn, orthorhombic, sh構造が存在することがわかった。レーザー照射部の断面を集束イオンビームで切り出し薄片化し、透過電子顕微鏡で観察した。明視野像から、レーザー照射部直下に高密度の格子欠陥が存在することがわかった。暗視野像から、β-Sn構造がそんざいすることがわかった。これらの結果から、従来の圧縮法ではシリコン高圧相は圧力下では存在するが圧力解放によって低圧相および準安定相に構造変化し、高圧相は残存しなかった。フェムト秒レーザー駆動衝撃波によって、初めてシリコン高圧相を常圧下に取り出すことが出来た。
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