本研究では、レーザー光照射が誘起する光還元反応により細胞内部に金属ナノ粒子を作製する手法を開発し、ナノ粒子を生体組織の観察や分析に用いることを目的としている。さらに、開発する手法を用いて、細胞内部の任意の微小領域中に表面増強ラマン散乱の計測に用いるプローブを作製できる。本年度は、レーザーを照射しない実験条件で、金イオンが細胞の生存能力に与える影響を解明することを重点的に行った。金イオンが細胞の生存に与える影響は、十分に検証されておらず、重要なポイントでもある。われわれは既に細胞が1mMの四塩化金酸水溶液中で5日間生存可能であることを明らかにしたが、金イオンが細胞の生存に与える影響を定量的に評価することが必要となるため、購入したナノ粒子をテスト用のサンプルとして生細胞内に導入した。マクロファージやHeLa細胞のように、ナノ粒子を飲食作用により体内に取り込む細胞を利用することで実現できる。細胞内部の金ナノ粒子を観察、測定する最適な手法を選定した。まずミクロトーム法により透過型電子顕微鏡で金ナノ粒子を観察し、その後より短時間で観察できる手法を検討した。また、暗視野顕微鏡やレーザー散乱顕微鏡も検討した。
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