研究概要 |
本年度は、単一集光スポット照射による表面ナノレリーフについて調べた。通常の集光では打ち消し合うことで創り出せない光軸方向の偏光成分(Ez)及び面内の偏光成分のみを有する特殊な偏光による表面形状変化を調べるため、分割λ/2波長板を用いて放射状(Radial)偏光と円周状(Azimuthal)偏光場の創成を試みた。結晶軸方向の異なるλ/2波長板を組み合わせることでRadial、Azimuthal偏光を創り出し、それらを対物レンズで集光する。集光スポット内で単一蛍光分子(DiI)を2次元操作し、電場分布を蛍光強度に変換することで、集光スポット内での電場分布(Ex, Ey, Ez)を観察した(単一蛍光分子の配向イメージング)。計算結果と比較することで、Radial、Azimuthal偏光による集光スポット場が確かに形成されていることを確認した。またλ/2波長板の分割数が8以上であれば、十分理想的なRadial、Azimuthal偏光を創り出せることが分かった。 分子配向の観点から、2光子吸収によるポリマー移動現象を調べ、1光子吸収の場合と比較することでメカニズムの解明を図った。サンプルとしてアゾ系ポリマーフィルムを用い、光源には波長920nmのチタンサファイアレーザーを用いた。誘起された表面レリーフをAFMで観察した。焦点位置がフィルム直上の場合、1光子吸収と同じ偏光依存性を示したが、レーザー焦点位置依存性は1光子吸収の場合とは全く正反対であった。具体的には、焦点位置がフィルム表面より上方にある場合、フィルムは凹み、下方にある場合には隆起することが分かった。この反転現象は、2光子吸収によって誘起される分子配向状態が1光子吸収と異なることに起因すると考えられる。また、光誘起ポリマー移動のメカニズムとして光の強度勾配が強く関与していることが分かった。
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