本研究の目的は、100GHz帯の高周波の超音波パルスを利用して、100nm程度の高分解能をもつ超音波顕微鏡技術を開発し、ナノ構造試料内部の3次元構造を非破壊的に可視化することである。この技術は、固体内部に最も高周波数の超音波パルスを非破壊的に発生させることのでき、実際に薄膜の評価などに使われているフェムト秒パルスレーザーを使った測定法であるピコ秒超音波法に、超音波探傷法などで使われている逆問題的な3次元位置推定の方法を取り入れたものである。 この技術の方法を説明する。まず、試料の表面でポンプ光パルスによって熱弾性的に超短超音波パルスを励起する。その超音波パルスが試料内部の構造で反射され、表面各所へ到着する時間やその強度を、プローブ光パルスを時間的に、また表面形状に沿って2次元空間的に走査し測定する。その測定結果をもとに、反射源の位置や、形状、音響インピーダンスを推定し、試料内部の3次元構造を画像化する。 今年度は、評価用の試料の作製、測定光学系の立ち上げを行った。評価用試料は、市販の超薄シリコンウェハーおよび厚みが数100nmのSiNメンブレンに、金属薄膜を蒸着し、収束イオンビームで直径数100nmの穴を裏側から開けて作製した。測定システムとして、試料および対物レンズをそれぞれ2軸ステージに載せ、それぞれ走査することのできる光学系を作製した。また、これらの電動ステージを自動制御する測定プログラムを作成した。この光学系を用いて、SiNメンブレンに金薄膜を貼った試料中の超音波伝播を1ps・1μmのスケールで時間空間イメージングすることができた。
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