研究概要 |
音波エンジンでは, 往復動ピストンの代わりに音波がエネルギー変換を実行すると考えられている. しかし, これまで誰も直接的にこの熱音響エネルギー変換の様子を観測していない. 本研究では, 温度勾配のある円管内でどのようにしてエネルギー変換が起きるかを圧力, 流速と温度の同時計測を通じて観測することを目的としている. 今年度は,(1) 温度振動の振幅と位相を正確に計測する手法の確立と温度,(2) 一様温度の管内における圧力, 流速の同時計測の実行, また(3)温度勾配のある管内での同様の計測を行った. 以下に結果要旨をまとめる. (1) 50μmの線径のK型熱電対の動的校正を行った. 参照温度としては大気圧空気が封入された管内の圧力振動を実測して得られる理論温度振動である. 熱電対の出力の振幅減衰と位相遅れの周波数に対する依存性および時間平均温度に対する依存性を明らかにした. (2) 大気圧空気が充填された一様温度の管内で, 流体が発熱作用を呈することを実験的に示した, とくに管壁から熱境界層程度離れた領域でエネルギー散逸が大きい. (3) 正の温度勾配のある管内でエネルギー変換の観測を行った. 圧力に対して流速が90度程度位相が進んでいる場合について実験を行ったところ, 壁から境界層程度離れた領域では熱から仕事へのエネルギー変換が起こること, また管の中心付近ではエネルギー散逸が起こることを明らかにした. より大きなエネルギー変換を実現するにはなるべく境界層を厚くすることが重要なことが示唆される.
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