表面波発振器は、金属板表面を周期的に振幅させた周期的境界条件による、遅波構造上の電磁表面波を電子ビームで励起することにより発振する。この共振器部を含めたシステムの開発費を安価にするため、卓上フライスとステッピングモーターを組み合わせた、NCフライスを作製した。 分散式の計算結果に基づき、共振器部の周期構造を、波長10mm・波高7mmとした。最大発振周波数9.7GHzの共振器となる。作製したフライスの加工限界を考慮し、パラメータを決定した。 表面波発振器の発振周波数の、電子ビーム電圧による制御特製を計算確認した。電圧増加に対し周波数が指数関数的に増大するため、発振に際し、高周波側では電子ビーム電圧の揺らぎの影響を受けにくいが、低周波側で発振周波数を安定させるためには、電圧の高い安定度が必要である事が判った。広帯域発振を起こすスミス・パーセル型不安定性による寄生発振は、チェレンコフ相互作用による主発振に対し、使用する電子ビーム電圧の範囲では、時間的成長率が二桁程度低い事を計算確認した。従って、この寄生発振の電力では本発振に対し、影響を殆ど及ぼさないと推定される。 周期構造と電子ビームの距離Dを縮めると、発振周波数は、指数関数的に増大することを計算確認した。当初予定していたD=7mmを5mmへ変更する。結果、時間的成長率は約10倍になる。強い発振はビームを遅波構造に近接させねば得られず、この特性のため、この相互作用は、これまで顕在化してこなかったと予想される。
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