本研究では、シリコンテクノロジーにおいてキーテクノロジーとなっている酸窒化プロセスに用いられるプラズマプロセスにおいて、各種反応活性種の振舞いを、レーザー計測をはじめとする各種気相診断法を用いて、定量的に評価すると伴に、プロセスメカニズムの解明を行うことを目的とし、平成20年度においては下記の研究成果を得た。 まず、プラズマ窒化プロセスの全工程であるシリコンのプラズマ酸化プロセスの高速化を実現するために、水素添加アルゴン/酸素表面波プラズマ内の活性種の振舞いについて各種気相診断法を用いて、定量計測を行った。基底・励起状態酸素原子、水素原子など原子状ラジカルは真空紫外レーザー吸収分光法、OHラジカルなどは紫外吸収分光法、荷電粒子を四重極質量分析法を用いて評価した結果、水素添加条件下においでも、励起状態酸素原子がシリコン酸化膜の成長に極めて重要な酸化種であることが判明した。さらに、水素ガスを添加することで、励起状態酸素原子の並進温度が上昇し、表面反応場に供給される酸化種の量が増えると伴に、水素原子が、その励起状態酸素原子の表面反応の上昇に大きく貢献していることが判明した。 次に、ラジカル窒化プロセスに広く用いられるリモートプラズマから供給される窒素原子の定量的評価を、我々が独自開発に成功している大気圧マイクロホローカソード光源を用いた真空紫外吸収分光法を用いて行い、その振舞いを明らかにした。さらに、プロセスにおいて極めて重要である窒素分子の温度を、発光分光法を用いた計測により、明かにし、リモートプラズマから供給される活性種の振舞いを系統的に分析することに成功した。今後、実際に窒化プロセスを行い、形成された膜分析結果と気相計測の結果を解析するとともに、平成20年度から構築を進めているキャビティリングダウン吸収分光システムの結果を組み合わせ、窒化プロセスのメカニズムの解明を行う。
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