本研究"神経細胞チップのX線マイクロビーム照射実験による神経伝達機構の解明"では、半導体、細胞工学の技術を用いて神経回路が人工的に設計された神経細胞チップを開発する。さらに、神経伝達回路を構成する特定の細胞部分にX線マイクロビームを照射し、その影響による神経回路の情報伝達特性の変化(損傷、修復など)について調べることを目的としている。 開発した神経細胞チップは細胞培養用シャーレ上にフォトリソグラフィ等の微細加工技術を利用して製作された。サンプル培養細胞はPC12を用いた、PC12細胞の神経突起の成長はNGFの投与によって制御することが可能である。PADCプラスチック基板上にSU-8光硬化樹脂層をフォトリソグラフィによってパターン形成させた。PADCとSU-8の親水性の違いによって、細胞外マトリックスが制御されるため、PC12培養細胞のパターニングが可能である。次に神経成長因子薬剤NGFを投与することによって情報を伝達するための神経突起(軸策と樹状突起)を成長させて、人工的に設計された神経回路を形成させた。神経突起も同様に光硬化樹脂層に沿って成長することが確認でき、並びあった細胞間でネットワークが形成された。 次に、神経細胞チップの特性を調べるために、神経細胞の活性状態をFluo3-AM(Ca2+)蛍光試薬と微小電極プローブを用いて、細胞内のカルシム濃度イメージを収得した。細胞チップ内の特定細胞にX線マイクロビームを照射した場合では、放射線照射に伴って神経死が誘導され、数時間後のカルシウム濃度イメージでは神経回路の一部が切断される様子を観測した。
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