単一のイオンが半導体に入射した時に発生するシングルイベント過渡電流(SETC)と、イオン入射位置の関係をマツピングする手法であるIPEM型TIBICの測定系構築に着手した。Am-241からのα粒子を発光体に入射させたところ、微弱な発光を視認することができたものの、発光強度と発光位置の関係を位置検出器(PSD)にて検出するには至らなかった。その原因として、PSDの検出感度が低いことが挙げられる。次年度は、検出感度の高いPSDを用いて実験を行う計画とする。一方、従来型TIBICを用いた実験では、15MeVの酸素イオンに加えて、当初予定していた260MeVのネオンイオンよりも線エネルギー付与(LET)の大きい520MeVのアルゴンイオンが電界効果トランジスタ(MOSFET)に誘起するSET電流の計測に成功した。この測定は、MOSFETの信号端子が3端子であることに対応する等の測定システムの高度化を行うことで実現した。測定結果から、ドレイン端子とソース端子で発生するSET電流は極性が逆であり、その大きさがほぼ同じであることが明らかとなった。次年度以降は、デバイスシミュレータを用いてイオン誘起電荷の輸送過程の解析を進める。また、イオン入射位置とSET電流の大きさとの関係から、約1μmの位置分解能で、高エネルギー重イオンが誘起するSET電流のマッピング像を取得することができた。これら一連のTIBIC測定を通じて、IPEM型TIBIC測定を行う際の測定条件(印加電圧)を決定することができた。
|