研究概要 |
本年度研究計画に基づいて,以下の成果を得た. 1. 前年度に開発した原子の運動を直接追跡する分子動力学(Molecular Dynamics ; MD)シミュレーションと粒子系における周期解の探索手法であるNewton-Raphson法を連結した非線形振動解の探索コードを使用して周期解を網羅的に探索した.その結果,解析対象として取り上げたグラフェンシートにおいて非線形局在モードが存在することを確かめた.得られた数値解を解析することによって,局在構造が炭素の結合方向に沿った振動として出現すること,振動振幅が振動周波数の増大に伴って大きくなること,振幅がボンドの伸びと圧縮で異なるという振動構造の非対称性といった,相互作用ポテンシャルの非線形性による特性が出現することを明らかにした. 2. 周期解を探索する系のサイズの増大を考慮した探索コードの改良を行い,得られた非線形周期解が系のサイズや境界からの影響を受けることなく存在しうることを確かめた. 3. フロケの理論による周期解の安定性解析に基づいた非線形周期解の数値的な安定性解析を行い,周期解の動的不安定化のプロセスを検討した.具体的に2次元の炭素構造体であるグラフェンシートにおける非線形振動における解析では,不安定化がおこる場合にはボンドに沿った方向に励起される非線形振動に対して,ボンドに垂直な方向の成分を持った不安定モードが出現することが明らかになった.これはボンドのつなぎかえといった構造変化に非線形振動が寄与していることを示唆していると考えられる.
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