研究概要 |
物体間の波の多重散乱現象に基づいた繰り返し解法(IPNM)を球および雨滴形状を有す導体による3次元電磁波散乱問題の境界要素解析に適用し. 収束性および解の精度を評価した. 研究代表者が過去に報告した2次元問題においては物体が密に分布する例においてIPNMは収束せず発散した. これに対して, 本問題では導体同士が接近した場合においても収束した. また, 導体のサイズが大きいほど収束性が向上することを示した. これらの結果を偏波および3次元散乱特性に基づいて解説した. 上記は今後現実的な多物体電磁波散乱問題の大規模数値計算の高速化にはIPNMが有用であることを示した大変有意義な結果である. ただし, 問題を構成する物理パラメータすべてに対して数値実験を行ってないため, 追加の実験が必要である. また, 問題の規模を拡大させたい. 連立1次方程式の係数行列の特異値分布に基づいたIPNMの理論的な収束条件と収束性との関連性を調査した. これはIPNMの利用において事前に収束可能性を判断する手法の確立を目指した独自性の高い意義のある実験である. 結果としては両者の間に直接的な関連性を見出すことができず, 散乱問題を構成する物理パラメータを考慮する必要がある. 連立1次方程式の求解においては2007年にIDR(s)法が提案され, 現在世界的に注目されている. 代表者は昨年度に引き続き九州大学情報基盤研究開発センター藤野教授のグループと共同で10万元を越える複素完全密行列に対する性能評価を実施した. IDR(s)法は従来の反復法に比べ限られた計算機資源において扱う問題の規模を拡大させることができることを示した.
|