研究概要 |
本研究の目的は, 工学的に用いられている金属材料について, 凝固に伴う微視組織の形成から加工や熱処理過程において生じる微視組織の変化に対し, 変形や応力を動的に連成した解析モデルの構築を行うことである. 本研究開始当初の研究実施計画においては, フェーズフィールドモデルを用いた相変態と応力・ひずみの連成解析を中心に,(1) 相変態の応力依存性の導入,(2) 結晶粒界挙動のモデル化,(3) 凝固プロセス, 加工プロセス, 熱処理プロセスの連続シミュレーション, および(4)微視組織を有する材料の力学特性評価からなる全体計画をたて, 初年度となる平成20年度においては,(1) および(2)について検討する予定としていた. このうち, まず(1)については, フェーズフィールド方程式における応力依存項について検討し, 引張りおよび圧縮応力が負荷されたときの変態駆動力への影響を調べた. この項は変態速度に影響することから, 変態率の時間変化を巨視的な解析に用いられるJMAK式による表現と比較し, 同等な効果が現れることを示した. ただし, 現状では平均応力への効果のみが考慮されており, より一般的な形式への改良が必要である. また,(2) の粒界挙動については, 分子動力学解析によって, 安定な粒界構造をとるときの粒界エネルギーを計算するとともに, 凝固に伴う多結晶組織形成のシミュレーションを行い, 安定または準安定的に得られる結晶粒界の構造を検討した. その結果, 凝固によって形成される粒界は, 結晶核の方位や配置に強く依存するものの, エネルギー的に安定な粒界構造が優先的に形成される傾向を示すことがわかった. 次年度においては, さらに詳細な検討を進め, フェーズフィールドモデルへの組み込みを図り,(3) 連続プロセスのシミュレーションおよび(4)力学特性評価を進めることとする.
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