研究概要 |
平成20年度における本課題の研究成果は次のようにまとめられる. 1. 長繊維強化型FRP積層板のクリープ挙動をマルチスケール解析するため, まず, その構成要素であるラミナ(一方向FRP)のクリープ変形を, 研究代表者らが提案した時間依存変形の均質化理論に基づき解析した. その結果は, これまで文献等で報告されている一方向FRPのクリープ挙動と定性的に良く一致し, 本解析の妥当性が確認された. 2. 次に, 上記解析手法に積層理論を導入し, 長繊維強化型FRP積層板のクリープ挙動を解析可能な形に拡張した. これを用いて, 代表的な長繊維強化型FRP積層板であるクロスプライおよびアングルプライCFRP積層板のクリープ挙動を解析したところ, 顕著なクリープ応力依存性および負荷方向依存性が確認され, これらは, 実際の積層板のクリープ挙動と定性的に良く一致する結果であった. このことから, 本手法の長繊維強化型FRP積層板への適用性が示された. 3. さらに, 上記1および2で開発した手法に基づき, 平織物強化型GFRP積層板のマルチスケールクリープ解析を実施した. このためまず, 繊維束および母材からなる平織物強化型GFRP積層板の複雑な微視構造をユニットセルモデリングした. つづいて, このユニットセルモデルの繊維束部分に弾性特性を, 母材部分に弾性-クリープ特性を与え, 本手法により解析を行ったところ, その結果は,長繊維強化型CFRP積層板の場合と同様に顕著なクリープ応力依存性および負荷方向依存性を示し, これらは文献等で見られる平織物強化型GFRP積層板のクリープ挙動と定性的に良く一致した.
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