研究概要 |
平成21年度は,前年度に開発した均質化理論によるFRP積層板のクリープ解析手法の妥当性を検証し,その有用性を明らかにした.主な成果は次のようにまとめられる. (1)開発手法の妥当性を検証するため,まず,一方向CFRP積層板のクリープ試験結果を本手法による予測結果と比較した.負荷条件として3種類の非主軸負荷を考え,それぞれの非主軸負荷に対して静的強度の40%,60%および80%にあたる応力を負荷した.また,温度条件は100℃で一定とし,母材の構成モデルとして,等方硬化に基づくべき乗クリープ則を用いた.このような場合における一方向積層板のクリープ挙動を本手法により予測したところ,その結果は全ての場合において試験結果と精度良く一致し,本手法の妥当性が示された. (2)つづいて,クロスプライおよびアングルプライCFRP積層板に非主軸負荷を与えた場合のクリープ挙動を予測した.負荷応力と温度条件は一方向積層板の場合と同じとした.その結果,負荷応力が中程度まで(静的強度の40%および60%)においては,予測結果と試験結果が良く一致することが示された.これに対して,高応力負荷(静的強度の80%)の場合には予測精度が低下したが,この原因と考えられる大変形に伴う繊維軸の回転を考慮に入れ解析を行ったところ,予測精度を大きく改善することができた. (3)さらに,平織GFRP積層板のクリープ解析を行った.微視構造の観察結果に基づき作成したユニットセルモデルを用いて,一定応力による非主軸クリープ変形を本手法により解析したところ,試験で観察される平織GFRP積層板のクリープ挙動を再現可能であることが示された.また,強化材である平織布の積層パターンが,発生するクリープひずみに大きく影響を及ぼすことを見いだした.
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