研究概要 |
今年度の研究では, 非局所結晶塑性理論を用いた多結晶金属の解析を検証するために, 離散転位動力学に基づく均質化理論の構築を行った. この構築では, 周期複合材料を考え, 母材中では転位が運動することを許し, 問題を設定した. この問題は, 2つの状態に分けられ, それぞれの状態について境界値問題を検討した. まず, 状態1の問題は, 強化材を母材で置き換えた無負荷状態において, 転位による内部応力が作用している問題であり, 検討の結果, 転位の作る弾性場は巨視的応力には寄与せず, 巨視的ひずみには転位の運動によるすべりのみが寄与することがわかった. 次に, これらの関係式と状態2の問題を考えることによって, 最終的に解析すべき均質化方程式を導いた. 導かれた均質化方程式は, 従来の弾性周期複合材料のための均質化方程式を内在しており, また強化材を母材に置き換えれば, 従来の無限体中の周期単位を解析するための離散転位動力学計算の数理構造と等価であることがわかった. 双方との等価関係より, したがって本研究で構築した理論は妥当であるといえる. なお, 均質化方程式に含まれる2つの弱形式の境界値問題は, 強化材の存在による擾乱変位と強化材と転位の相互作用による擾乱変位をそれぞれ求めるために有限要素解析される. 最後に, 複合材料モデルを実際に解析した. ただし, この解析は2次元問題であり, 今後はより転位の力学特性を考慮することの可能な3次元問題にプログラムを拡張する計画である.
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