研究概要 |
耐食性, 耐薬品性に優れていることから一般化学プラントや原子力発電施設などに広く用いられているSUS304鋼における磁気計測を用いた疲労損傷非破壊評価手法を開発することである. き裂発生前の疲労損傷状態を評価することが可能となれば, プラントの健全性維持や信頼性を飛躍的に向上させることができるSUS304鋼はオーステナイト相を有しており, 非磁性である.SUS304鋼に塑性変形や疲労損傷が生じた場合に磁性相であるマルテンサイト相が生成することが報告されている. このような金属疲労の初期段階に生じる材料の磁気特性の変化を, 外部から計測することにより, 構造部材中のき裂発生以前の損傷状況を把握できるものと考えられる. 本研究では, 疲労損傷過程におけるマルテンサイト相および漏洩磁界分布の観察を行った.その結果, 漏洩磁界分布は疲労損傷過程におけるマルテンサイト変態を反映しており, 応力集中部やき裂の発生箇所を効率的に検出できることが分かった. また疲労損傷過程のマルテンサイト体積率およびひずみ挙動を比較した結果, 繰返し変形におけるマルテンサイト変態とひずみ挙動の変化に対応関係があることが明らかとなった.また疲労損傷過程のマルテンサイト変態挙動を累積塑性ひずみで表すことが可能であることが分かった. これらを詳細に調査することで繰返し変形下における金属組織の構造変化によるマルテンサイト変態のメカニズムの解明ができるとともに, 疲労損傷過程のマルテンサイト変態のモデル化を行えばマルテンサイト体積率の測定結果から累積塑性ひずみ, すなわち疲労損傷程度を評価できることが期待される.
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