研究概要 |
織物セラミックス基複合材料(CMC)に対する信頼性評価技術の確立を目指し,高速衝撃損傷メカニズムを実験・解析両面から明らかにすることを目的とした。まず簡単な材料系として炭素繊維強化プラスチック直交積層板の飛翔体衝突試験を実施し,表面および内部の損傷形態を観察した。さらに,SPH法による飛翔体衝突シミュレーションを行い,応力波の伝搬によって表層のクレーターやスプリッティング,内部のコーンクラックや大規模層内破壊が生じるメカニズムを明らかにした。 物体を粒子の集合として表すSPH法はスポール片が飛散するような大変形問題に有効であるが,本研究で考える衝突エネルギーでは損傷が貫通せず,有限要素法が適している場合もある。そこで,同一の飛翔体衝突問題をそれぞれの手法で解析し,その結果を比較した。層内の大規模な破壊はSPH法,層間はく離は有限要素法でよく表現できるという知見を得た。 また,脆性材料である織物CMCに適用する損傷判定基準を検討するため,単体セラミックスの高速衝撃解析を実施した。この解析ではワイブル分布に基づく統計的強度分布を導入した。応力拡大係数を考慮した等価垂直応力による判定基準を用いることにより,文献に報告されている実験結果をよく表現できる損傷形態が得られた。また,コーンクラックはせん断応力によって,クレーターやメディアンクラックは主応力によって発生・進展することを明らかにした。 実稼働状態を想定し,高温暴露および熱衝撃を施した2次元平織CMC試験片に対して飛翔体衝突試験を実施した。600℃の高温暴露・熱衝撃では材料に変化は見られなかったが,1000℃の熱負荷ではマトリックスに変化が見られた。また,1000℃の熱負荷により繊維/マトリックスが固着して材料が全体として脆化し,低い衝突エネルギーで損傷が試験片を貫通することを明らかにした。
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