研究概要 |
本年度は, ポリ乳酸(PLLA)単体に熱処理や鍛造などを施すことにより高次構造を制御した後に, 機械的特性を調査し, PLLAの更なる高強度化および高次構造の機械的特性に与える影響の解明を目的とした. 試料は射出成形機を用いて成形したものを用いた, 高次構造の一つとして試験片の結晶化に着目して, 試験片に70℃で3, 8, 16, 24時間100℃で3, 8, 24時間, 130℃で3, 24時間の熱処理を施した試験片を用意した. また高分子鎖の配向を目的として, ホットプレス機を使用した圧縮することで試料を長手方向に延伸する鍛造を施した. 鍛造は100℃, 120℃で行い, 加熱した治具にセット後それぞれ10分放置後, 加圧を行った。加圧時間は10分間で, その後水冷を施した. 延伸比は2倍で行い, 120℃でのものでは加えて3倍の延伸比でも作製した. また, 120℃, 2倍延伸の試験片は, 3分放置, 3分加圧のもの, 5分放置, 5分加圧のものも作製した。機械的特性は引張試験により評価を行った. 結晶化は70℃, 8時間周辺で急速に進行する. 100℃での熱処理では3時間でほぼ結晶化が終了し, 以降はあまり進行しない. 130℃では3時間以降もさらなる結晶化が見られる. 結晶化度の進行により, ある程度までは強度, 破断ひずみは上昇するが以降は脆化による減少が進んだ。また弾性率は結晶化に伴い概ね上昇することが明らかとなった. 鍛造を施すと通常の熱処理よりも急激な結晶化をみせる. 120℃鍛造を施すと弾性率が若干上昇し, 明らかに脆化することが確認された. 脆化が原因で強度の低下が見られた. 100℃の鍛造では良好な強度・弾性率の向上が確認できた. 更に高分子鎖の配向と形状付与を同時に行うことが可能なスクリュー用の金型を試作し, 予備実験を行うことによりスクリューの作製が可能であることを明らかにした.
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