研究概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は比強度,比剛性,対熱変形に非常に大きな優位性を有する材料であり,特に耐熱変形に対しては線膨張係数をゼロに設定できる特徴的な材料であるため,今後の航空宇宙分野での適用がさらに広がると期待されている.CFRPの母材である高分子材料が時間依存性を有するため,CFRPに微視的な経時変形は「つきもの」という見解が一般的であり,衛星搭載用ミラーなどの非常に精密な部材への適用は想定されていなかった.そこで本研究にて,CFRPの精密さの向上およびその長期保証について,そのメカニズムなどがミクロンオーダーにて明らかにされたその一つに,従来明らかにされていなかった「対称積層板にも関わらず,非対称な面外変形(鞍型変形)を起こす」という問題を繊維の配向角のずれをパラメータとして,解析,実験を行うことで,そのメカニズムを明らかにし,形状を予測できるようになった.このことは21年度の成果の一つである.一方で,樹脂の粘弾性特性に依存するCFRP構造物の経年変形を予測するために,粘弾性挙動をモデル化し,その定数を取得した.マトリクスは汎用のエポキシ樹脂と宇宙用のシアネート樹脂を用いた.さらに,樹脂の自己収縮現象であるフィジカルエージングについても調査を行った.これらの結果から,フィジカルエージングが進行すると粘弾性挙動も変化する相関関係があることがわかり,21年度にはその一部が明らかになったが,課題はまだ残したままである.
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