平成21年度は、前年度実施の「2次元直交座標系上の工具非干渉領域における直動軸駆動量導出システムの開発」を発展させ、開発済の「複数の工具刃先位置における駆動状態を参照した工具姿勢決定システム」を拡張し、仕上げ加工に要求される工具相対姿勢の維持を可能とするシステムを実現した。 具体的な内容としては、中仕上げ加工を対象とし、工具経路全体において旋回軸への指令値を連続的に変化させ、工具軸と被削物との干渉が生じない工具姿勢変化を現実的な時間内に計画するこれまでの手法に対して、新たに工具と加工面との相対姿勢を考慮した評価尺度を参照するアルゴリズムを開発した。ボールエンドミル加工において、事前実験によって得られた相対工具姿勢ごとの加工面性状の変化をデータベースにおき、相対姿勢中最も性状が良好となる工具姿勢の維持と、各旋回軸の連続性の確保を同時に行う工具経路変化計画を行うCAMシステムの実現に成功している。 システムの幾何処理および工具姿勢変化の探索においては、多数の工具刃先位置における干渉状態と工具相対姿勢の各旋回軸指令値に対する分布状態を可視化する必要が生じる。これらに必要となる幾何計算処理の短縮のため、本研究では従来から開発を行っている基盤的計算アルゴリズムを発展させ、グラフィックスハードウェア(GPU)として知られるコンピュータグラフィックス描画用デバイスが持つ並列演算の機能を実用化する技術を開発した。また、複数の工具刃先位置における多数の工具姿勢候補の状態を連続的に参照する計画手法として、時空間情報を3次元空間におけるテクスチャマッピングされた物体の分布として参照するD-Spatial法(Distorted Spatial-temporal Distribution Method)を開発し、テクスチャマップの透明度を利用することにより、最も目標相対姿勢と近い位置を連続的な工具姿勢変化とともに通過する工具姿勢変化を再帰的に導出するアルゴリズムの実現に成功した。
|