研究概要 |
骨の機械加工において, 皮質骨は脆性的な材料であるために大きな切込において顕著な脆性き裂を発生することが分かっている. しかも, その脆性き裂は断熱的に発生することが指摘されていることから, 発生する脆性き裂の大きさや方向を自在に制御することによって加工による温度上昇を伴わない除去加工が可能になると考えられる. 1. き裂を利用した骨加工法の提案 提案した手法では, 工具の進行とともに制御した方向にき裂を生成し, 1回のき裂が形成した部分をブロック状に破壊する. それとともに工具は生成されたき裂面を僅かな切削抵抗による切削で極微細加工しながら仕上げ面を創成する. このような大切込切削では最初の脆性的き裂発生のために大きな力が必要となるうえ, そのき裂を工具進行方向に平行に発生しなければならない. そこで, 脆性的き裂の大きさと進行方向を制御するために, 工具の加工方向を衝撃振動で限定するき裂制御型加工法を提案した. 2. 皮質骨の脆性き裂発生のメカニズム解明 2次元切削を可視化することによって, 骨の組織構造との関連で亀裂発生の発端から進行方向や大きさあるいはき裂面の性状などを解明し, それを実際にき裂制御型加工にどう結びつけるかを検討した. 本研究では, 組織構造に依存しながら進展するき裂を積極的に利用するが, 刃先近傍に生じる引張り応力による斜下方向の亀裂を抑制しなければならない. そこで, 振動や衝撃を与えることによってき裂方向を制御する方法を試みた. 3. 脆性き裂発生の力学的解析 脆性き裂発生の発端となる工具刃先の応力場の解析によって亀裂の大きさや進行方向の予測を行い, その結果と実験結果を対応することによってき裂発生と制御の関係を検討した.
|