研究概要 |
骨を切除する際において,切削温度を低下するためには,工具や骨の冷却もしくは冷却水の導入が避けられないが,手術環境を各種の汚染から守らねばならない手術現場では,必要以上の器具の使用を避けたいし,手術時間も限定されるので,冷却のための余計な作業はなるだけ避けたい. そこで我々が提案するのが「脆性亀裂制御による昇温防止型加工システムの開発」である.我々のこれまでの研究で,皮質骨は脆性的な材料であるために大きな切込において顕著な脆性亀裂を発生することが分かっている.しかもその脆性亀裂は断熱的に発生することが指摘されていることから,発生する脆性亀裂の大きさや方向を自在に制御することによって加工による温度上昇を伴わない除去加工が可能になると考えられる.本年度は,下記の項目を実施した. 1.脆性亀裂制御型工具の開発 平成20年度中に開発した加工法を工具および装置へと発展させるとともに,上記の亀裂制御型骨切除法をシステム化した.脆性亀裂は繰返し衝撃によって発生させることが望ましいと考えられるので,ノミ型工具に繰返し衝撃振動を与える装置の開発を試みた.最適な亀裂制御を行うためには,工具材質,工具形状,衝撃条件などの詳細な検討が必要であり,平成20年度に得られた実験データを基に装置を開発した. 2.開発した加工装置の総合評価実験 実際に人工関節置換術支援骨切除装置で人体標本等を用いた加工実験を行うことで,その有効性を評価した.具体的には,(1)本加工装置を用いることによる,加工の低加工エネルギー化による骨切除の低侵襲化の評価,(2)加工精度,加工能率からみた装置の加工特性評価,(3)臨床試験に展開するための安全性の評価を行った.
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