本研究では、提案した「マイクロバブルクーラント」に期待される各種の特徴のうち、まずは、研削加工液(研削液)として使用した場合の「加工特性に及ぼす作用」について検討した。マイクロバブルクーラントが供給できる環境対応型供給ノズルを開発し、平均直径が20〜50μmの微細気泡が水溶性加工液中に多量に混入されること、ならびに加工液を確実に研削加工点に供給できることを確認した。試作した研削液供給装置を用い、ステンレス鋼材を被削材としてWA砥石で平面プランジ研削実験を行った結果、窒素混入マイクロバブルクーラントを供給した本実験の範囲では、通常の研削加工液供給方法を使用した場合に比べて砥石摩耗体積量を15〜30%程度抑制できることを確認した。 次に、同クーラントに期待される「加工液の浄化作用」について検討した。具体的には、(1) クーラント腐敗の要因と考えられる細菌の除去作用(除菌作用)および(2)クーラント内に浮遊する切屑や油分の除去作用について、主に水溶性研削液を対象としてマイクロバブルの効果を実験的に検討した。あらかじめ細菌を発生させた水溶性研削液中でマイクロバブルクーラントを5〜30分間循環させた後、細菌検出器によって採取したサンプルを37℃の恒温器内で24時間培養した結果、加工液中に1×10^6個/ml存在していた細菌はほとんど消滅し、1ヶ月以上経過しても細菌が発生しないことを明らかにした。また、マイクロバブルは加工液中の微細な切屑や摺動油を吸着して液面に浮上させて分離できる作用を持ち、加工液を容易に浄化できる効果があることがわかった。上記の結果により、本技術によって加工液自身の浄化および長寿命化が可能であることが明確となり、工場の製造現場で問題となっている水溶性加工液の腐敗抑制に大きく貢献できることを見出した。今後、上記の効果発現メカニズムなどの検討を行なう。
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