本研究では、マイクロバブルクーラントの特徴のうち、前年度明らかにした「加工液浄化作用」の効果の発現理由の解明を試みた。まず、(1)クーラント腐敗の要因と考えられる細菌の除去作用(除菌作用)について、外気からバブルを供給する場合と、液中の溶解空気を使用する場合で比較し、この除菌作用は液中の溶存酸素量の影響を受けていないことを明らかにした。したがって、マイクロバブル自身が細菌の不活性化に作用し、マイクロバブル圧壊時に発生するフリーラジカルが起因していると考察した.次に、マイクロバブルは加工液中に浮遊する微細な切屑や摺動油を吸着して液面に浮上させて分離できる作用を持つため、(2)上昇して凝集させた切屑や油分を容易に除去できるクーラントタンク構造について検討した。タンク内の水位を上昇させて懸濁物質を飽和除去する方式、強制吸引によって除去する方式、スキージを利用する方式、送風による凝集効率の向上など、複数の懸濁物質除去装置を試作した。いずれの方式も、液面上に浮上した懸濁物質を除去するのに有効であった。また、懸濁物質の除去処理の効率化を考慮すると、加工に使用する加工液量自身を少なくすることが有効であるため、当該申請者らが考案したフローティングノズル法やフレキシブル導液シート法などの効果的加工液供給方法をマイクロバブルクーラント技術と併用する新しい環境に優しい加工技術を提案した。本研究の結果を踏まえて、現在、マイクロバブルクーラント技術の実用化に向けた取り組みを、国内の工作機械関連メーカーと共同で継続実施するに至っている。さらに、簡易イオン発生器を用いた加工液の腐敗臭除去についても検討し、意図的にイオン混入した腐敗水溶性加工液の悪臭が抑制できることを明らかにした。本研究成果は加工液自身の長寿命化に繋がり、製造現場で問題となっている水溶性加工液の腐敗抑制に大きく貢献できることを見出した。
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