研究概要 |
静電インクジェット現象を利用した三次元造形物の直接描画技術の開発を行った.静電インクジェット現象とは,先端にキャピラリーチューブを設けたシリンジに導電性の液体を満たした液体針電極に高電圧を印加すると,チューブ先端に作用する強い静電力によって微小な液滴が連続的に吐出されることを指す.これまでの研究により,静電インクジェット現象は,市販されているピエゾ方式とサーマル方式のインクジェットプリンタよりも高画質で吐出可能であること,高粘性な液体を吐出可能なことという二つのメリットを有することを把握していた.そこで本年度は,これらの特長を生かして,以下の三次元造形技術への応用を行い,基礎特性の把握を行った.まず,本インクジェット現象を用いてガラスペーストのような粘性の高い材料を吐出させることで,立体造形物の作製が可能なこと,本インクジェット現象を用いて銀ナノパーティクルペーストを吐出させたものを焼結することで,電子回路を直接描画できることを示した.ガラスペースト用のシリンジと銀ナノパーティクルペースト用のシリンジを平行に設置し,両シリンジヘの印加電圧をPCによって制御することで,任意の三次元状の電子回路を直接描画する技術へと応用可能であると考えている.また,静電インクジェット現象によってエッチング液を金属細線や金属薄膜に対して吐出することで,極細線化と膜へのマイクロ穴あけ加工が可能なことを示した.これらの材料は,機械加工によって,さらなるマイクロ化を行うには,加工負荷の関係から困難であり,簡易的な別の加工方法が求められている分野であった.除去メカニズムの詳細の解明および実験パラメータの最適化を行い,実用化を目指す.
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