本研究の目的は、赤外線領域での高い波長分解能を有する回折格子の開発を行うために、、マイクロ切削加工などのマイクロ機械加工による微細溝形状創成と評価を行い、加工機上加工面性状精密計測によって加工機の運動性能と微細形状の転写精度を計測させ、加工計測フィードバックによ高精度溝加工法を確立することにある。 本年度は、超精密加工機を用いたマイクロバニシング加工およびマイクロ切削加工によって回折格子を作成し、レーザ回折光分布機上測定法によって評価を行った。回折格子溝の累積的溝位置精度は近接する複数波長成分の分解能に影響し、格子溝に周期的溝位置誤差がある場合はゴーストと呼ばれる偽のスペクトルを発生させる。加工実験の結果、マイクロバニシング加工においては反射光と回折光が連続的に広がっている光量分布をもち、バニシング加工における切削力に変化に応じて溝形状の乱れることによるランダムな形状誤差がみられた。一方マイクロ切削においては、切削された溝の回折光は上下に2本の水平方向の線が見られ、溝の垂直方向に波長33μm程度の周期的な微細形状転写誤差が発生している。1次回折光と0次光の間に5カ所のサブピークが見え、切削溝は回折格子の格子間隔に加工機の運動誤差と思われる10μmの周期的位置誤差が発生している。 また、レーザオートフォーカス機上計測法によるダイヤモンド工具切削加工によって加工誤差をフィードバック補正する実験を行い、回折格子の基板となる非球面形状の補正加工手法を開発した。 研究の展開として、本研究にて開発された加工装置評価手法を適用して、回折格子の加工に適した超精密加工装置および加工手法を開発に関する研究が実施された。
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