研究課題
昨年度に引き続き、含有金属として軟質の銅(Cu)を含む非晶質炭素(Cu-DLC)膜において、摩擦試験後の移着膜の分析を行った。昨年度最も低い摩擦係数を示した試料において、超高真空中での摩擦試験を行った。シリコンウェハ基板に堆積したCu-DLC膜に対して、相手材をJIS SUJ-2鋼として、往復動の摩擦試験を実施した。測定された摩擦係数は試験開始直後0.2程度であった。しかし、数~10回の摺銅後、膜のはく離に起因する急激な摩擦係数の上昇が見られた。超高真空という非常に凝着が激しい環境における試験であり、シリコンウェハとCu-DLC膜の密着性が十分では無い為、膜がはく離したものと考えられる。超高真空摩擦試験後、in-situでオージェ分光法を用いて、ボールの表面及び摩耗痕の化学組成分析を行った。ここで、分析は急激な摩擦係数の上昇が始まる前段階で実施した。まず、相手材の表面には移着膜が形成されていた。この部分を化学組成分析したところ、表面の移着膜は銅から形成されており、炭素の含有量は非常に少なかった。一方、摩耗痕の表面を組成分析したところ、摩耗痕の内側では、炭素の含有量が、その外側に比べ非常に大きくなっていることが分かった。分析結果が組成の割合として得られることを考えれば、摩擦によって、銅が摩耗痕から選択的に相手材に移着したものと考えられる。本結果によって、金属を含む非晶質炭素膜の摩擦は、内包する金属のみが相手材に付着する選択的移着型の形態をなることが初めて明らかになった。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件)
Diamond and Related Materials VOL.19
ページ: 548-552
Materials Science Forum VOLs.638-642
ページ: 2103-2108
International Journal of Applied Electromagneticsand Mechanics (未定, In press)