今年度における本研究の成果は、大きく分けて以下の3点である。 1、大規模CTデータ処理の枠組みの構築 ボリュームデータを処理するための枠組み「クラスタ連成データ構造」を構築してAPI(apphcation programing interface)としてまとめた。 分割統治法に基づくボリュームデータのクラスタリングによって小領域のクラスタの集合に分解される。隣接クラスタは重複部分を持ち、そこにインタフェースが定義され、クラスタ間のデータの連絡に利用される。このデータ構造の特徴は、各クラスタが独立して処理ができる点にある。これは、(1)それぞれをファイルに保存できる(out-of-core化)、(2)並列計算が可能であることを意味する。クラスタのサイズは、ボリュームデータと比較して格段に小さくなることから、一般的なPCにおいても十分に動作する。またクラスタ間において、一貫性が損なわれたとしても、インタフェースを介した通信により、一貫性を回復できるようにする。これにより、今後発生する同様の問題においても、本プログラムを用いることで効率的に開発できるようになった。 2、大規模CTデータ処理に対する幾何処理(中立面抽出) クラスタ連成データ構造のAPIを用いて中立面抽出(MAT)の大規模化を行った。中立面とは、物体の中心をとおる面集合であり、車体のボディなど機械部品によく見られる薄板形状に対して適用される。中立面抽出自体は、研究されてきたテーマであるが、大規模化を考慮に入れたものはなかったため、本研究では、中立面抽出の大規模化に取り組んだ。基本的なアプローチは、従来手法と同じであるが、各要素技術の大規模化を行った。特に、多段階中立ボクセル評価法は、中立ボクセル評価アルゴリズムを品質を保持しつつも計算負荷の軽減を実現しており、工業製品のCTデータに見られるような、大規模ボリュームデータであっても、現実的な時間で計算できることを示した。 3、球面空間における幾何処理アルゴリズムの研究開発 提案したボリューム処理のうち、距離変換アルゴリズムを球面に拡張した手法を提案した。
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