研究概要 |
本研究は血流阻害性の高い脳動脈瘤治療用のステントストラットの最適設計とその最適理論の構築である. 脳動脈瘤用のステントは2001年に発売されて以来, コイル塞栓術が施しにくいワイドネックタイプの動脈瘤に対してコイル保持機能を主としてきた. しかしながら, 近年ではステント留置により瘤内で血栓形成そして治癒膜生成を行うステントによる動脈瘤治療に注目が集まっている. そこで血流阻害性の高いステントが求められている. ステントメーカー各社はこれまでに強度・靭性・ステント操作性を強く考慮し開発を行い, そして近年では血流阻害性機能を目的として開発を進めている. しかしながら, 開発段階で数値流体力学解析を取り入れ, 流体力学の観点から定量的な評価のもとで設計されたものでない. 本研究ではステント開発時に流体力学の観点を導入することで脳動脈瘤治療用ステントにおける血流阻害性の高いステントストラットのデザインを開発する, この開発には, 脳動脈瘤の理想形状にステントを留置した数値流体解析用形状を作成し, 数値流体力学解析を行うことで動脈瘤内部における血流流れと血流による力の状態を定量的に評価することが必要である. 本年度は, 数値流体力学解析により, 各ステントストラットが脳動脈瘤内の血液流れと脳動脈瘤壁面にかかる力の影響を調べた. コンピュータ上で再構築された実形状ステントから個々のステントストラットを抽出し, そのストラットを動脈瘤ネック付近に留置することで, 個々のステントストラットが脳動脈瘤の血液流れと脳動脈瘤壁面へ及ぼす力学的な影響を調べた. また, 2009年1月に北海道札幌市で開催された日本機械学会主催のバイオエンジニアリング講演会において, 6ケースのステントストラットをコンピュータ上で作成し, 各ステントに対して数値流体力学解析を行い, 定量的な評価を与えることが可能であることを示した.
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