研究概要 |
本研究課題は流体の直接数値計算(DNS)と, 高分子鎖の分子動力学計算(MDS)を連結した数値シミュレーションプログラムを開発し, 乱流中の高分子鎖の運動・物性の諸性質とその乱流場との相互作用, 乱流の素過程への影響を, メソスケールのレベルから理解することを目的としている. 特に次の3点の課題に集中的に取り組み, 問題点の解明を目指す. 1) 乱流-高分子系のDNS-MDS連結マルチスケール計算プログラムを開発する. 2) 高分子鎖と乱流場との相互作用の詳細を明らかにし, 乱流中の高分子鎖の特性を理解する. 3) 多数の高分子鎖の集団運動が, 乱流の素過程に及ぼす影響を定量的に評価する. 初年度は主に1)に関する課題に取り組んだ. 乱流のDNSプログラムを基盤にして, 乱流場における流体粒子の速度および速度勾配テンソルのラグランジュ的な時間発展を得るためのプログラムを作成した. 次にこれらを用いた高分子鎖のブラウン動力学シミュレーションを実行するためのプログラムを開発し, 一様乱流中の高分子鎖の挙動とその基本的な統計性質に関する解析を行った. 高分子鎖運動のアニメーションを作成して観察し, 速度勾配のトポロジーと高分子鎖の伸長過程との関連性について, スカラー勾配場の伸長構造の解析結果と比較して議論した. また高分子鎖の伸長を特徴づけるワイゼンベルグ数を変化させると, コイル-ストレッチ転移が生じることが確認され、過去の研究結果で良く知られる諸性質が再現できることが確認できた. 得られた主な成果は, 日本物理学会2008秋季大会(岩手大学), 及び2009年会(立教大学)等で発表された.
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