研究概要 |
数種類の蛍光体について, その燐光強度, 燐光寿命の100〜800℃までの範囲における温度依存性を調査した. 調査では励起光の波長を355nm, 266nmの二種類に限定して実施した. その結果, それぞれある温度範囲内で燐光強度や燐光寿命が温度依存性をもつ蛍光体を10種類以上確認した. なかでも温度依存性が強い4種類の蛍光体について, 燐光強度, 燐光寿命, 発光スペクトルを測定した, その結果, 輝尽と呼ばれる励起直後の発光と, クエンチングと呼ばれる輝尽後の減衰過程において, いくつかの蛍光体で温度依存性が逆転することを確認した. 特に有機化合物系の燐光染料ではあまり確認されない輝尽が多く見られた. 本研究で特性を調査した蛍光体はいずれも無機物質であり, セラミックス同様に耐温性が非常に高いため, 800℃まで加熱しても目立った変質はなかった. 水溶液に溶解させて利用される蛍光染料では当然ながら100℃以上の温度条件に適用することはできず, また, 脂溶性染料の多くは温度によるクエンチングをあまり起こさないため, 高温の気体に限らず高温のオイルなどあらゆる媒体環境における高温温度分布について, 今回, 温度測定という観点から光学特性を明らかにした蛍光体は温度センサとして適用できる重要な物質であるといえる. また, 高温での高時間分解能計測を二次元的に行うため, イメージングインテンシフィアなどの特殊な機能を持たない高速度カメラを用いてこれらの蛍光体からの蛍光を計測した結果, 光増幅等を行わなくても50μs程度の時間分解能で二次元計測できる可能性が高いことを明らかにした.
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