研究概要 |
本研究では,初年度に燐光粉体の特性データベースを充実させた.また,冷却式CCDを用いて2画像間の燐光減衰を高感度に評価する方法と,高速度カメラを用いて複数画像間の燐光減衰を評価する,計2種類の計測方法を検討し,予備試験を行った.平成21年度はデータベースの拡充に加え,開発手法による過渡現象の測定と評価を目的とし,各種試験を行った. 1)気体中における燐光染料粉体の特性データベース作成 初年度,粉体状にした複数の燐光染料の気体中における発光特性を調査した.平成21年度は気体中の固体壁に粉体を塗布した状態における特性データベースを作成した.塗布方法には接着剤を用いる方法,蒸着,ペースト化を選定し,塗布方法及び温度変化に応じて燐光強度・燐光寿命などの特性がどのように変化するかについて,安価に量産できる可能性の高い無機粉体に特に着目してデータベースの拡充を行った. 2)高速カメラによる計測方法開発/過渡現象の測定と評価 高速度カメラを用いて,最適かつ確実なタイミング制御を可能とした撮像系を構築した.得られる解析精度・測定ダイナミックレンジなどを考慮しつつ,正確な時間制御を実現できる撮像系を構築した.高速度カメラを利用すれば1度の励起で数百マイクロ秒の時間をかけて徐々に減衰する燐光を複数フレームで評価できる.平成21年度はこれまでの基礎調査とデータベースを参考として,実際の開発現場での有用性を高めるための試験を実施した.具体的には,壁面の温度変化がはやく,また,温度変化量が大きい例として,ガスエンジンのシリンダ内壁面を測定対象に設定した.ここでは約100μ秒の測定時間分解能が要求される.既存の定点計測機ではこの時間分解能で温度分布を測定することは不可能である.本研究では,システムの感度,応答速度から最適な燐光粉体を選定するとともに,撮影システムを最適化し,ガスエンジンシリンダ内の瞬時壁面温度分布の計測に成功した.
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