研究概要 |
固体高分子形燃料電池は実用化に向けて実証試験の段階にあるが、本格的な普及のためにはいまだ長期耐久性に不安がある。その劣化要因の一つとして膜電極接合体中の局所において極端な発熱や乾燥が起きている可能性が指摘されている。しかしながら、主に発熱していると予想される触媒層の厚みは10μm程度、固体高分子膜も20〜50μm程度と、一般的なシース熱電対の外径の100μm程度と比較しても極めて薄い。そのため、触媒層近傍の正確な温度を測定することは極めて難しく、膜に平行なガス流れ方向の温度分布を測定した例はあっても、触媒層のホットスポットや厚み方向の温度分布などを測定した例はほとんど無い。そこで、本研究では提案者らが培ってきたマイクロ加工技術を応用して、マイクロセンサを作成することで燃料電池の発電状態での触媒層近傍などの局所の温度を測定し、耐久性に悪影響を及ぼすホットスポットの発生条件を整理することを目的としている。その目的に向かい, まず絶縁耐力と物理強度の優秀なパリレンを基材に選定し, その数マイクロメートル程度の薄膜上にニッケルと金を熱蒸着することで, 微小熱電対の作成に成功した. また作成した熱センサの起電力測定を行い, 実用上十分な大きさの熱起電力とその線形性があることを確認した. また、温度場が物質輸送に与える影響などは整理するために, 微小センサ開発と並行して温度場と物質輸送場, 電荷保存を連成する数値解析コードの開発も目的としているが, 本年度はまず温度場と電荷保存を連成して解析を行うことに成功している.
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