研究概要 |
平成20年度は, マイクロ流路とマイクロセンサを活用した単一赤血球の電気特性と変形能特性の測定を行うために, 流路およびセンサを設計・製作して測定を開始した. マイクロ流路は, PDMS製であり, SU-8を型としてソフトエッチング行程により製作した. 一方, 電気センサは, 幅5μm・厚さ200nmの白金薄膜電極をスパッタとリフトオフ法を用いてガラス基盤上に製膜した. これらを接着した後に, I-V法により電極間を通過する単一赤血球の電気抵抗の変化を測定した。このとき, 赤血球を含む主流の両側に側流を設けることで赤血球の幅方向の位置を制御し, さらに流路に後向き・前向きステップを設けることでその高さ位置制御を行った. また, 抵抗測定用の電極の両側にガード電極を設置し, そこで形成される電気力線により抵抗測定用電極の電流密度分布のフリンジ成分を抑制することで, 測定精度の向上を図った. さらに, マイクロセンサとは別に, 高速度カメラと高解像度対物レンズ付顕微鏡を用いることで, 赤血球の電気抵抗測定と同時に赤血球の可視化測定を行った. 実験では, はじめにウサギ保存血液から赤血球を分離して測定を行い, その後, ヒト赤血球を用いて実験し, これらの実験装置とマイクロセンサの妥当性を検討した. その結果, 赤血球の通過に伴う抵抗値変化をS/N=20〜50の精度で測定が可能であることが分かった. さらに, センサの高時間分解能を活用することで, 赤血球通過時の抵抗値の時間変化分布を十分な精度で得られることから, 半値幅などの分布形状を解析することで, 赤血球の大きさや形状を求める可能性を示すことができた.
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