研究概要 |
高出力密度, 低温作動などの特徴を有する固体高分子形燃料電池(PEFC)は, 次世代の自動車用動力源や家庭用分散電源として開発が期待されている. しかしながら, 高性能化に向けて解決すべき技術的課題は未だ多く, 中でも, カソード側での生成水が触媒層あるいはガス拡散層(GDL)の内部で凝縮を起こし, 反応に必要な酸素の供給を阻害するという「フラッディング現象」は極めて深刻な問題である. この問題を解決するためには, PEFCのカソード電極内における水分輸送現象の基本的理解が重要であり, そのための計測評価手法の確立は必要不可欠である. そこで本研究では, 反射型近赤外吸収分光法を応用することにより, 燃料電池セルの多孔質電極内における凝縮水量を非接触で定量的に算出できる計測評価システムを構築した. 本計測システムでは, 特定波長(1.94μm)の近赤外光を燃料電池の多孔質電極上に照射し, その反射光の吸光度を測定することによって触媒層やGDLに含まれる水分量を推定することができる. さらに本研究では, 上記の計測評価システムを用いることにより, 一定時間発電させたPEFCセルのカソード側触媒層/GDL界面に貯留した凝縮水量の定量測定を行った. その結果, 電流密度0.1A/cm^2で発電を行うと, 発電時間の増加とともにカソード側触媒層に付着する水分量は次第に増加していくことがわかった. また, 発電時間が60分以上に達すると, 流路下流側での触媒層/GDL界面に貯留する凝縮水量が著しく増加することが明らかになった. これは, カソード下流域のガス流路が液水によって閉塞され(プラッギング現象), その結果, 触媒層・GDL内部での水分の排出が妨げられたためと考えられる.
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