液体・超臨界圧水素は、核破砕中性子源用の減速材やロケットの燃料としてだけでなく、クリーンエネルギーである水素エネルギーの大量輸送・貯蔵手段や高温超伝導体の新しい冷媒としても期待されている。しかしながら、液体水素の熱流動特性に関する知見は殆どなく、そのデータの重要性は産業界からも指摘されている。そこで、本研究では、液体水素による冷却システムの設計指針の確立、および、その要素技術開発に必要不可欠な液体水素の熱流動特性データを集積することを目的としている。 昨年度、水素の安全性を考慮に入れた液体水素熱流動特性試験装置の製作が完了した。実験装置の低温性能試験では、レイノルズ数が3×10^5以下であれば、安定な液体水素の強制流動が得られ、採用した原理により、質量流量を計測できることが確認できた。さらに液体水素の温度は実験槽の底部に設置したヒータによって、さまざまな圧力条件下で所定のサブクール度に設定できることも確認できた。 実験槽圧力を0.4~1:0MPaとし、サブクール度(<10K)の条件下で、内径6mmの垂直円管発熱体に円管試験流路に直流電流を流して加熱し、強制流動下(流速は~10m/s)における熱伝達特性(熱流束と加熱表面温度と液温の差)をこの実験装置を用いて測定した。非沸騰熱伝達は、ジッタスベルタ式でほぼ記述されることがわかった。一方、核沸騰限界熱流束は、サブクール度、流速が大きくなるにつれて大きくなったが、液体水素の核沸騰限界熱流束特性は、畑らにより提示された水などの従来の流体で得られている核沸騰限界熱流束相関式と異なり、液体水素の場合、サブクール度の影響が小さくなることが本研究により明らかになった。このように、はじめて液体水素の強制対流熱伝達に関する有意な基礎データを取得することに成功した。
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