研究概要 |
本研究では最近マイクロ流体技術で盛んに行われている連続相・分散相流路上の交差流路より発生させる液滴生成技術を応用して,液滴の中にブタ卵子とブタドナー細胞を一個ずつ封じこめ,ブタ卵子とブタドナー細胞のカップリング及び融合を実現させることを目的とする.平成20年度は多相エマルジョンを用いたマイクロチップ内における細胞融合システムの構築を目的とし,磁気駆動マイクロツール(MMT)による液滴生成技術開発を行い粒子1個1個を内包する技術の確立及び,大きな駆動力を得るためのハイブリット磁気駆動マイクロツールの開発に成功した.平成21年度は平成20年度で開発された液滴生成チップのさらなる改良に取り組んだ.主な研究成果は以下の通りである. (1)これまでのチップにおいて分散相である密度の大きい疎水流体の圧力がMMTに打ち勝ちマイクロツールからの液滴の漏れを生じることが多かったが,これを防ぐためにマイクロ流路内に圧力を逃がすバイパス流路を設け,さらに上下対称に流路を設計することで,疎水流体と親水流体の圧力バランスを獲得することができ,MMTからの流体の漏れの問題を完全に克服した. (2)また,上記設計の流路による液滴生成のダイナミックレンジは圧力バランスがとれていることから,従来の流路よりも飛躍的に向上し,40-180μmの従来比3倍のサイズ範囲で液滴生成を達成することができた.また上下で2倍の液滴生成ができることより,ハイスループットで液滴生成を行うことが可能になり,また液滴の漏れの問題も解決したことよりオンデマンドでかつ必要な数だけサイズ制御された液滴生成が可能となった. 以上により細胞内包を目的とする液滴生成技術は,前後の細胞操作などの処理信号などの送受信により必要な数だけ,その内包する細胞の大きさに合わせた液滴の生成が可能となった.今後は現在開発途中のMMTを用いた卵子とドナーの融合技術と液滴生成合併し融合システムの構築を目指す.
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