研究概要 |
本研究は,バリアフリーの整備が十分になされておらず車いす利用者の入場が不可能なものもい歴史的建造物や史跡・景勝地において,景観保護やオーセンティシティの維持に配慮し文化財を傷つけることなく車いす利用者が健常者と同じ経路で観賞することを可能にする人間搭乗型移動支援機器の開発を行うことにより,環境を改変することなく利用できるバリアフリー技術を提案するものである. 平成21年度は,前年度に基本設計と運動学・静力学解析を行った楕円軌道状に拘束された複数車輪を用いた形状可変移動機構の原理的な問題点の解決を図り,より少ない自由度で形状可変機能と走行機能を実現する,形状可変4節リンクを用いた複数車輪式階段昇降機構を考案した. この機構は4節リンク機構の隣り合う2つの対偶を能動対偶とし,これを駆動することにより平行四辺形・一直線・くの字型の3種類の形態に変形可能である.またこのリンク機構は各頂点に車輪を備え,能動対偶とこれら車輪を差動歯車により干渉駆動することで,車輪による走行と変形を2つのモータで制御可能となっている.システム全体は6つの自由度を持ち,昇降中も必ず4つの車輪が接地するため静的安定性と低接地圧を保ったまま走行と階段昇降が可能である. この機構の運動学解析,静力学解析を行い,この計算結果に基づき基本設計・詳細設計を行い,試作機TBW-1を実際に製作した.これを用い走行,方向転換,階段昇降等の基本的な性能を予備実験により確認した.
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