研究概要 |
本研究の目的は,ソフトな把持を実現している単純かつ小形な柔軟把持機構の駆動力から把持力への変換効率を増大させ,駆動力を発生するアクチュエータをも含めた小型化を達成し,エネルギー効率および制御性の面で不利な空気圧駆動式グリッパに代わる小型電動グリッパを実現することである.本年度は,(1) 柔軟把持機構の柔軟な把持指の大変形を表現可能な構造力学モデルの構築,(2) 前年度に構築した回転ばねで接続されたリンクモデルの修正と拡張の二つを主に行った.(1)については,柔軟把持機構の柔軟な把持指が対象物と接触した後に把持力の増加に伴い外側に膨らむように変形する現象をオイラーの座屈理論を用いて表現した構造力学モデルを構築した.この構造力学モデルを用いて柔軟把持機構の変形形状のシミュレーションを行った結果は,実験結果と良く一致することが確認された.またシミュレーション結果から,駆動力と把持力の間の非線形性を明らかにし,さらに把持指の弾性座屈による変形の反力が対象物に把持力として貢献することを明らかにした.(2)については,変形形状のみならず,駆動力と把持力の関係においても精度良くシミュレーションできるよう,前年度構築したリンクモデルの修正と拡張を行った.これらの成果により,小型電動グリッパを実現するための前年度確認した柔軟把持機構の把持効率を増大させる境界条件をも含めた柔軟把持機構の設計を,二つのモデルを用いて多角的に精度良く行うことが可能となった.
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