研究概要 |
本研究の目的は, 受動走行原理に基づいたより良く走れる走行ロボットを開発することである. 本年度は, 実験機として最も簡単なバネ付きリムレスホイールを用いることによって, 走行現象の実験的発現に成功し, 以下のような移動特性をもつことが分かった. 1) スロープ角度が低い状態では, 移動形態は歩行となる. 低速および高速の二つの定常状態が存在する. (歩行) 2) スロープ角度が上がると, 歩行から走行へと遷移する. 走行の定常状態は一つしかなく, スキップのような走り方となる. (スキップ走行) 3) あるスロープ角度を越えると, ボールが転がり落ちるように加速していき, 定常状態には至らない. (転がり走行) そして, バネ付きリムレスホイールの走行現象をモデル化し, 同モデルが実験とほぼ合うことを確認した固有値解析から走行現象が安定であることを示し, スロープ角度が4〜5度のとき最も安定性(収束性)が良くなることを明らかにした. このときの安定性は非常に高く, 制御を一切用いず, 機体のもつダイナミクスだけで, これほどの収束性が実現できることは興味深い. また, 起こし回転運動に関する基礎実験を行った. 起こし回転運動とは, バーを斜めに地面に投げつけると, 水平方向の速度が上昇方向の速度に変換されて, バーが回転しながら跳ね上がる現象のことである. 平坦な地面に対して実験者が適切に投射することで, 4回の連続起こし回転を実験的に成功した. 平均速度は4.4[m/s](15.8[km/h])となっている. 今後は, これらの知見を深めて平衡点の生成と安定化メカニズムを明らかにし, これらのメカニズム基づいた走行ロボットを開発する予定である.
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