本研究の目的は、二脚歩行ロボットが過酷な環境でも活動できるようにするための基盤的制御理論の構築、具体的には、不連続な足の踏み替えと連続的な力の操作とをシームレスに統合した、大域的安定な自律二脚制御系の設計開発である。本年度得られた成果は次の通りである。 1. 不連続な足の踏み替えを行わない、すなわち立位運動の範囲で、連続的に力を操作し重心を安定化する制御器の性能を評価するための新たな指標を提案した。またその指標に基づいて、最良な性能を持つ立位安定化器の成立条件と設計方法を示した。 2. 上記の最良性能を有する立位安定化器を以てしても安定化できない運動の限界条件を明確にした。その条件に基づき、安定化のために踏み出しが必要か否かの判別方法を提案した。立位安定化器の性能が最大化されていれば、この判別が容易になることが分かった。 3. 上記の踏み出し要不要判別に基づき、不連続な踏み替えによって将来的にロボットを安定化可能な状態へと移行させるための戦略を提案した。最良な立位安定化器においては、可安定な重心の領域と可制御な重心の領域を容易に分離することができるため、単に安定化するだけでなく、踏み出し直後からの可制御性を確保するような戦略が望ましく、そのための足踏み出し位置の条件が明らかになった。 4. 上記の最良な立位安定化器におけるダンピング項を連続的に変形することによって、可制御性・可安定性に関する条件を損なうことなく、安定な重心の自励振動を発現させるような非線形制御を開発した。外因的な摂動に対し頑健に安定振動状態を維持できることが分かった。 5. 上記の重心自励振動に同期し、安定な足踏みを行うための制御器の設計方法を提案した。これにより、定常的な運動の範囲で不連続な足の踏み替えと連続的な力操作が統合された。
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