ヒューマノイドロボットを含む二脚ロボットが、過酷な環境でも活動できるようにするための基盤的制御理論構築を目的とし、不連続な足の踏み替えと連続的な力の操作とをシームレスに統合する大域的安定な自律二脚制御系の設計開発を進めた。研究代表者自身の先行研究にあった、ある不変な支持状態における地面からの反力操作と、支持状態による拘束が仮想的に取り払われた世界における反力操作との矛盾を解消するように、自動的に支持状態を変形するというアイデアが端緒となった。当初計画していたのは、上記の先行研究によって作られた力学系のPoincare断面をとり、そこに現れる写像と制御パラメータとの関連を調べることで、離散的な安定構造に迫るというものであった。昨年度開始した本課題の初期段階において、不変な支持状態における立位安定化制御器の性能を最大化する理論と、その立位安定化器が作る平衡安定な力学系を非線形に変形させることで、非平衡安定な力学系(自励振動系)へと連続的に遷移させられることが分かった。本年度は、安定な自励振動系から抽出した位相情報と空間情報に基づいて、自己無撞着な支持状態の変形を可能にする方法を開発した。連続的な力学系の断面から帰納的に安定構造を見出すのではなく、演繹的に不連続な支持状態変形を連続的な運動制御に取り込むことができた。これは当初の予想を超えた成果であった。 また、実際の二脚ロポットにおいて支持状態の変形という不連続な現象を許容するための、対地適応性の高い足先機構の設計開発や、巨視的に表現されたロボット重心の運動を関節運動に分解し関節モータをロバストに制御する方法等を開発した。提案する理論を机上の理論に留めず、ハードウェアの側面から身体制御を議論できたと考える。
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